【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第3話) |ブログ|岐阜新聞社営業局

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【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第3話)

【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第3話)

※高校ダイアリー2023秋号にて掲載したリレー小説を再掲載いたします。
第1話
第2話

図書室の君と…

第3話
作:ゆるふわさん(坂下高等学校 2年) 

 バスの中でも、どうしても桃園のことが頭から離れなかった。

(どうなってんだ? なんなんだよ……!)

 頭を掻きむしっていると、バスはいつも降りるところについていた。

 そのまま家に帰ると、夕ご飯の匂いが鼻をくすぐる。その美味しそうな匂いにつられた瞬間、『ぐぅぅぅぅぅ~』と、獣のいびきみたいな音が響いた。笑う母親の顔を横目に、椅子に座り夕ご飯をかきこむ。

すぐに食べ終わって風呂に行き、チャプンと湯につかった。

(それにしたって神宮寺のやつ、なんでわざわざこっちに来たんだ?)

(……ってか、どうして神宮寺のやつに今もイライラすんだよ……)

(それより、また明日も桃園は俺なんかの勉強に付き合ってくれるんだろうか?)

 ――ダメだダメだ、また桃園のことを考えている。

 溜息をつきながら、風呂から上がった。

(桃園を誘ったらまた神宮寺が来るんだろうな……せっかく桃園と二人っきりだったのに……)

「はっ!? 俺、今何考えて……」

 思いもよらない自分の心の声に驚き、慌てて口元を手で覆い隠す。洗面台の鏡には、茹でダコみたいに真っ赤になった自分の顔が映っていた。

「俺、気持ち悪……」

(何だこれ、まるで桃園を独り占めしたいみたいな……マジかよ……)

 さっきよりもでかい溜息をつく。

「まさか俺、桃園に恋してんのか……?」

(いや、まさか。俺みたいなのが、よりにもよって学校のマドンナの桃園に恋なんて……俺の思い違いだ! きっとそうだ! とにかく今日はもう寝よう)

 俺はベッドの中に入り、目覚まし時計をセットすると、それを枕元に置いて眠りについた。

 

 ――翌日。

 色々考えてしまって、結局寝られなかった。口を大きく広げあくびをし、学校に行く支度を済ませる。

「……よし。今日、桃園を誘ってみよう」

 そう心の中で決心して、家を出発した。どれだけ考えても答えがまとまらないなら、いっそ当たって砕けてみるしかない。

 学校につき、下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声がした。

「おはよう」

(この声は……桃園だ!)

「お、おはよう。あのさ……」

 振り向きざま、図書館での勉強に誘おうと思った瞬間、声が出なくなった。

「うん? どうしたの?」

「い、いや……今日も暑くなりそうだね」

「そうだね。あ、友達が呼んでるから、またね」

「う、うん」

 いざ誘おうとするとこんなにも緊張してしまうのかと、自分でも驚いてしまった。のろのろとした足取りで教室に向かうと、桃園はすでに友達とおしゃべりをしていた。

(俺、ホントに誘えるのか? もうタイミングがわからん……)

 陰キャの俺にはハードルが高すぎる。でも、このままは嫌だ。一体どうなるんだ、俺……