2023.11.24
【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第3話)
※高校ダイアリー2023秋号にて掲載したリレー小説を再掲載いたします。
第1話
第2話
図書室の君と…
第3話
作:ゆるふわさん(坂下高等学校 2年)
バスの中でも、どうしても桃園のことが頭から離れなかった。
(どうなってんだ? なんなんだよ……!)
頭を掻きむしっていると、バスはいつも降りるところについていた。
そのまま家に帰ると、夕ご飯の匂いが鼻をくすぐる。その美味しそうな匂いにつられた瞬間、『ぐぅぅぅぅぅ~』と、獣のいびきみたいな音が響いた。笑う母親の顔を横目に、椅子に座り夕ご飯をかきこむ。
すぐに食べ終わって風呂に行き、チャプンと湯につかった。
(それにしたって神宮寺のやつ、なんでわざわざこっちに来たんだ?)
(……ってか、どうして神宮寺のやつに今もイライラすんだよ……)
(それより、また明日も桃園は俺なんかの勉強に付き合ってくれるんだろうか?)
――ダメだダメだ、また桃園のことを考えている。
溜息をつきながら、風呂から上がった。
(桃園を誘ったらまた神宮寺が来るんだろうな……せっかく桃園と二人っきりだったのに……)
「はっ!? 俺、今何考えて……」
思いもよらない自分の心の声に驚き、慌てて口元を手で覆い隠す。洗面台の鏡には、茹でダコみたいに真っ赤になった自分の顔が映っていた。
「俺、気持ち悪……」
(何だこれ、まるで桃園を独り占めしたいみたいな……マジかよ……)
さっきよりもでかい溜息をつく。
「まさか俺、桃園に恋してんのか……?」
(いや、まさか。俺みたいなのが、よりにもよって学校のマドンナの桃園に恋なんて……俺の思い違いだ! きっとそうだ! とにかく今日はもう寝よう)
俺はベッドの中に入り、目覚まし時計をセットすると、それを枕元に置いて眠りについた。
――翌日。
色々考えてしまって、結局寝られなかった。口を大きく広げあくびをし、学校に行く支度を済ませる。
「……よし。今日、桃園を誘ってみよう」
そう心の中で決心して、家を出発した。どれだけ考えても答えがまとまらないなら、いっそ当たって砕けてみるしかない。
学校につき、下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声がした。
「おはよう」
(この声は……桃園だ!)
「お、おはよう。あのさ……」
振り向きざま、図書館での勉強に誘おうと思った瞬間、声が出なくなった。
「うん? どうしたの?」
「い、いや……今日も暑くなりそうだね」
「そうだね。あ、友達が呼んでるから、またね」
「う、うん」
いざ誘おうとするとこんなにも緊張してしまうのかと、自分でも驚いてしまった。のろのろとした足取りで教室に向かうと、桃園はすでに友達とおしゃべりをしていた。
(俺、ホントに誘えるのか? もうタイミングがわからん……)
陰キャの俺にはハードルが高すぎる。でも、このままは嫌だ。一体どうなるんだ、俺……