【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第1話) |ブログ|岐阜新聞社営業局

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【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第1話)

【高校ダイアリー リレー小説】図書室の君と・・・(第1話)

※高校ダイアリー2023春号にて掲載したリレー小説を再掲載いたします。

図書室の君と…

第1話
作:おとめちゃん (瑞浪高校 文芸部) 

俺は、ため息をついて、窓の外を眺めた。俺が今いる図書室の窓からは、グラウンドがよく見える。グラウンド沿いの歩道には、桜が綺麗に咲いている。今春は暖かく、桜が例年より綺麗に咲いていると、ニュースでキャスターが言っていた。そんな暖かな気候とは真逆に、俺の心は曇りきっていた。俺は視線を下に向けて、机の上に広げてあるノートと参考書に目を向けた。

「はあ……」

俺はもう一度深く息を吐いた。俺ははっきり言って成績が良くない。元から底辺だった俺の成績は二年の冬、さらに急降下した。大学への進学が怪しいぐらいだ。だから俺は新学期早々、勉強している。だけど気が乗るわけもなく、さっきから全くペンが進まない。悶々と考えている俺の背後で、図書室のドアが開いた。

 図書室に来る人は皆、勉強のできそうな見た目で、俺と話したことない人ばかりだ。さっきから何人も入って来ているが、今のところ俺と話が盛り上がりそうな人はいない。図書室に来ているのに、誰と話が合うかなんてことを考えているのは、俺だけだろう。こういうところが俺とここに来ている他の人との違いなのだろう。よく、先生達が言うような受験生の自覚とはこういうものなのだろう。そんなもの全員どこかへやってしまえばとも思う。が、そんなことはあるはずもなく、結局は、俺が「頑張る」の一つに尽きるのだ。

「隣良い?」

 うだうだと同じような考えが巡るばかりで、全くペンを手に取っていなかった俺の顔を覗き込むような形にしながら、女の子が隣へ来た。

「ん、いいよ」

 俺は平常よりも少し低いトーンで返事をした。特段理由はなくて、ただ頭が回っていなかっただけだ。そんな俺は、来てから二十秒ほど、この女の子が誰なのか気が付いていなかった。だから、彼女の顔を真っ直ぐに見た時、少しばかり、いや大分驚いたのだった。その子は、わが校の生徒会長にして、学校のマドンナ、桃園(ももぞの)ハルだったからだ。

 あまりの驚きに、俺は桃園の顔をこれまた二十秒程凝視していた。桃園ハルが、こんなに身近に来るなんて想像もしていなかった。俺が見つめすぎたせいか、桃園は不思議そうに首を傾げた。

「どうしたの?」

 思わず、そう尋ねる彼女の顔から目を背けた。なぜ彼女がここに?しかもなぜ俺のところに?などと考えれば考えるほど頭は真っ白になった。何か答えないといけないとは思ったが、言葉が出てこない。

 「いや、別に……」

 やっとのことで出した言葉は、俺の心のうちとは真逆のものだった。

 桃園とは同じクラスだが、それぞれ違うグループなので、お互いに接点が無い。一方的に、と言ったら変かも知れないが、俺が桃園をよく知っているという感じだ。桃園が俺の教科書とキレイなノートをちらりと見た。

 「よかったら、わかんないとこ教えようか?」

 笑顔でそう言う彼女の姿は間違いなく女神だ。

 「おっ、お願いします」

 少し声が上擦った。

 桃園が学校指定の鞄からペンケースを取り出している。その仕草を見て何故か胸の鼓動が高鳴るのと、頬が紅潮するのを感じた